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例会案内(原則毎月第2土曜日開催)

※ 新型コロナウィルスの影響により、本研究会の例会は、2020年春以降、ZOOM開催をしております。
・次回例会は2022年3月12日に開催されます。
・3月例会案内
日時:2022年3月12日(土)14:00〜17:00

テーマ:テストに過剰な期待を負わせる社会―教育における現状と測定方法の限界


報告者:光永悠彦(名古屋大学教員)

会場:Zoomによる開催
(会員外で参加希望の方は、「お問い合わせ」より
 ご連絡ください。)
報告概要
 2020年に予定されていた大学入試改革は、民間英語4技能試験や記述式の導入、e-ポートフォリオの活用といった新機軸がことごとく頓挫した。にもかかわらず、2025年度から「情報」という新科目を導入しようとする動きがあるように、大学入試で多くの観点から「学力」を測ろうとする動きは止まらない。
 このような動きは、果たして日本の教育のために有益であるといえるのだろうか。本来、テストで「正確に」測れる「学力」の範囲は狭いものにならざるを得ない。わずかな時間をかけて行われるテストで、得られる情報は限られている。だからといってテストの負担を増やせば、受験者=学習者=高校生に求められるテスト対策への負担は増す一方となる反面、「大学入学にふさわしい学力」の像があいまいとなり、教育的意義が低下する恐れすらあるだろう。
 資格試験の多くは、必要な基準に達しているかどうかを、受験者個別に調べるために行われており、測るべき「学力」の範囲も専門的知識の狭い範囲に限定される。それに対して、教育で行われるテストは、課す側がテストに過大な機能を期待する傾向がありはしないだろうか。そのことが教育のあり方に悪影響を及ぼしているのが現状ではないだろうか。
 本発表では、テストの開発に携わっている筆者が、こうした「メリトクラシーの再帰性」の流れに一石を投じ、私たちがどのようにテストと付き合っていくべきかについて述べる
 
 
※ 以下はこれまでの例会の報告タイトルです。
・2月例会案内
日時:2022年2月12日(土)14:00〜17:00


テーマ:戦後の学校教育と吃音--大熊喜代松による吃音の治療教育



報告者:橋本雄太(立命館大学大学院先端総合研究科一貫制博士課程)

会場:Zoomによる開催(予定)
(会員外で参加希望の方は、「お問い合わせ」より
 ご連絡ください。)
報告概要
 戦後における学校と吃音の歴史の源流の一つとして、大熊喜代松(1926 2008)による吃音児への治療教育があります。戦後の学校では学力低下が話題となり、大熊喜代松は小学校教員として学業不振児を担当しており、“読みのおくれた子ども”と呼称し、国語の読みを中心とした治療教育に取り組みました。そして、大熊はアメリカの言語病理学と出会い、吃音児の治療教育へと発展させました。

 例会では、戦前の日本で初めて組織的に吃音矯正を展開した楽石社の歴史から振り返り、大熊喜代松による吃音児の治療教育について、皆さまと一緒に考えていきたいと思っています。

・2021年12月例会

日時:2021年12月11日(土)14:00〜17:00

テーマ:『年報教育の境界』第18号合評会

会場:Zoomによる開催

 『年報教育の境界』第18号の合評会を行います。野崎康夫さんが執筆された「過労死・過労自殺からみた教員の働き方」に対しては、「野崎さんや私は何故過労死・過労自殺しなかったのか」を執筆された中西宏次さんよりコメントをいただき、また他の論考については、当日参加される執筆者本人からコメントをいただき、『年報教育の境界』第18号に掲載された論考をめぐって、参加されるみなさんで検討します。なお、会員の方には『年報』を送付しておりますが、会員以外の方で例会に参加を希望される方には、『年報』の当該号を郵送させていただきますので、お早めに四方までご連絡ください。

・2021年10月例会

日時:2021年10月9日(土)14:00〜17:00

テーマ:食マイノリティと「コピー弁当」
 —食物アレルギー児の親からみた日本の学校文化

報告者:山ノ内裕子(関西大学教員)

会場:Zoomによる開催

以下は、報告者からのコメントです。

 みなさん、「コピー弁当」という言葉を聞いたことがありますか。コピー弁当とは、食物アレルギーやイスラム教徒のように、医学的・宗教的な理由から特定の食物に制限がある子どもたちのために、学校の給食メニューに似せて「完コピ」した代替給食弁当のことです。2018年より食物アレルギーの子どもをもつ親たちの活動を参与観察してきましたが、このたび、「コピー弁当」を作っている23名の保護者へ自由記述アンケート調査を、そして13名の保護者へインタビュー調査を行うことができました。当日の例会では、これらの調査結果を報告しつつ、「コピー弁当」からみた日本の学校給食や学校文化について、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。

*なお、11月例会は実施しません。ご了承ください。

・2021年9月例会

日時:2021年9月18日(土)14:00〜17:00
*いつもの第2土曜日ではありませんので、ご注意下さい。

テーマ:人権の名のもとに「幼児期の性教育」は何を語っているのか
――基礎研究と、幼児教育における「母親モデル」の問題――

報告者:小泉友則(大学・専門学校非常勤講師)

会場:Zoomによる開催
 

以下は、報告者からのコメントです。

 性教育が子どもの「人権」を保障するための教育の一つであるということは、日本では少なくともここ30年以上言われ続けています。
 性教育論では、高校生向け、中学生向け、小学生向け、幼児期向けなどの世代に分け、それぞれの世代に対応した性教育を実施すべきとする傾向があります。本報告では、「人権」に根差した幼児期の子ども向けの性教育に関する議論を整理し、そこで展開されている議論の問題を見ていくことを目的とします。
 本報告で着目する問題点とは、「幼児期の性教育には人権と相反する教育論が混在しがちである」という端的なものです。その問題を皆さんで共有し、さまざまな意見をいただければと存じます。

・2021年7月例会
日時:2021年7月10日(土)14:00〜17:00
テーマ:「リスペクト」をキー概念とする近現代教育史絵巻は作れるか ─「共生」時代に向けた知の冒険─
報告者:岡本洋之(兵庫大学教員)
会場:Zoomによる開催

 1997年に、英国人スマイルズの著書『セルフヘルプ』を訳出した中村敬宇(正直)に「異なるものの共存」思想を見出した私は、敬宇以後現代までの(できるだけ英国とつながりのある)教育者のなかに、同種の思想を探す旅に出ました。まず敬宇の次世代の大物・菊池大麓にこの思想を見出しましたが、論文は査読でアウトとなり、いったん挫折しました。
 一方で、英国人ポール夫妻から刺激を受けて1920年代の自由大学運動を指導した土田杏村のなかに「異なるものの共存」思想がありそうだと見た私は、ポール(夫)が19世紀末に長崎に住んでいたことを知り、同地で様子を詳しく調べましたが、ポールが変わり者だったことしかわからず、再び挫折しました。
 そこで私は、敬宇の弟子で、部落解放運動の先駆とされる民権家・山上卓樹のことを知るため八王子に通いました。彼の思想は「異なるものの共存」とは真逆でしたが、研究中に出会った五日市憲法草案作成者・千葉卓三郎は、政治の学習会を荒らす者に苦しめられつつも、そのような者を排除しませんでしたので、私はそこに「異なるものの共存」思想を見ました。
 また私は、大学生時代に同和・解放教育の一指導者であった横田三郎の影響を受けたことから、彼が育った背景を知るため香川県で農村史を調べながら横田書を再読しましたが、彼は「異なるものの共存」思想とは無縁でした。しかし彼の盟友・中村拡三は、奈良や京都で小学校教師として、各々異なる子どもの個性をよく見て指導していました。その原点は、彼が長野県塩尻で、大正新教育の余韻を受けて育ったことにありました。
 他方、英国の労働者階級が、自由な討論と自由な論述を通して高度の教養を学んだ「学問的自己教育の文化」の伝統を、松塚俊三先生から教えられ、改めてポール夫妻と土田の書などを読み直した私は、この「学問的自己教育の文化」にポール夫妻は反対し、土田はこの文化を理解せず、長野県下伊那郡の青年たちは自力でこの文化を掴もうとして果たせなかったことを知りました。同郡は拡三の初任地だったので、もう少し考察を深めれば彼とのつながりも解明できましょう。
 ここまで考えて私は、自分の考察のキー概念を、社会の目標を示すだけの「共存」や「共生」から、それに向けて構成員がすべきことを示す「リスペクト」に改めました。今は上述の人々におけるそれの有無を見つつ、全体をまとめようとしています。当日はその様子をお話し申し上げ、皆さんのご意見を仰ぎたいと思います。
・2021年6月例会
日時:2021年6月12日(土)14:00〜17:00
テーマ:総合的な学習の時間を担当する小学校教員の悩みと学び
報告者:野崎大輔(兵庫教育大学院生/兵庫県公立小学校教諭)
会場:Zoomによる開催
以下は、報告者からのコメントです。
総合的な学習の時間(以下,総合的な学習)が学校現場に導入されてから20年が経とうとしています。総合的な学習は、各教科で義務付けられている教科書が定められておらず、各学校では、これまで多様で創造的な取り組みが実践されてきました。一方で、教科書という枠組みなかで授業をしている教員にとっては、多様で創造的といった総合的な学習の自由度の高さが悩みの種となっています。例会では、私の教育実践や現場の教員の声から、自由に対して不安を抱く小学校教員の悩みと学びについて、みなさんと考えていければと思っています。

 
・2021年5月例会
※5月例会は諸般の事情で休会でした。
・2021年4月例会
日時:2021年4月10日(土)14:00〜17:00
テーマ:「通学路」という隘路を探る/歩く ー京都府南山城村童仙房地域の通学経験を中心にー
報告者:鈴木伸尚(大阪市立大学教員)
会場:Zoomによる開催
 
 「通学路」という言葉から何を思い浮かべるだろうか。友人と連れ立って帰った思い出だろうか、あるいは、日々の習い事のためにひとり家路を急いだ記憶だろうか。
 今日、「学校保健安全法」(2015年改訂)では、学校安全計画の策定が各学校に義務付けられ、計画の中には 通学路の 安全確認や安全な登下校の指導が項目としてしばしば盛り込まれている。学校現場は、子どもを安全に家から預かり、保護者が安心できる形で家に届けることに一意専心である。
 また、2019年以降教職課程を維持するための再課程認定にあたって、文部科学省から各大学に示された「教職課程コアカリキュラム」では、教育社会学を含む「教育に関する社会的、制度的又は経営的事項」において、学校安全への対応を教えるよう明示された。そこでは、「生活安全」、「災害安全」に並ぶ三つの領域の一つとして「交通安全」 が挙げられている。安全管理と安全教育の両面から、学校現場での具体的な取り組みを理解させることが当該講義の到達目標となっている。教職に携わる教育社会学者は、誰のための安心・安全であり、そもそもの前提となっているモータリゼーションの内実まで踏み込んで問えるのだろうか。
 本報告では、京都府南山城村童仙房地域をフィールドワークしながら、通学経験の聞き取りをして見えてきたものを報告したい。童仙房地域は、明治に開かれた開拓村である。村の子どもは、戦前から戦後しばらくは、小学校1年から3年までを村の分校(童仙房分校)に通い、4年からは麓の本校(大河原小学校)まで、最長で8キロ、2時間かけて歩いた。1953年の南山城水害で通学路が一時的に遮断されたことで村の学校だけに通うようになり、2006年に学校が統廃合したのちは麓の南山城小学校まで子どもたちはバス通学になっている。
 コロナ感染症の影響が大きく、 この一年は思うように調査を進められていない。少ない材料ではあるが、学校の病理ではなく、学校の生理を問うモノ・コト研究の視座から「通学路」をどのように捉え、今後深めていくのか、参加者の率直な意見と議論をお願いしたい。
 
・2021年3月例会
日時:2021年3月13日(土)14:00〜17:00
テーマ:『子どもの性欲の近代』(小泉友則著、松籟社、2020)合評会
会場:Zoomによる開催
コメント:西田亜希子(神戸女学院大学非常勤講師)
 
・2021年2月例会
日時:2021年2月13日(土)14:00〜17:00
テーマ:『問いからはじめる教育史』(岩下誠・三時眞貴子・倉石一郎・姉川雄大著、有斐閣、2020)合評会
 
コメント:土屋尚子(大阪芸術大学教員)
なお、岩下誠さん(青山学院大学教員)、三時眞貴子さん(広島大学教員)、倉石一郎さん(京都大学教員)、姉川雄大さん(千葉大学教員)の4名の著者のほか、
有斐閣の編集者である得地道代さんが参加されます。
※例会に先立って、13:30より、教育の境界研究会2021年総会を開催します。
会員の方は、総会よりご参加下さい
・2021年1月例会
 
日時:2021年1月9日(土)13:30〜16:30
テーマ:『自立へ追い立てられる社会』(広瀬義徳・桜井啓太編、インパクト出版会、2020)合評会
 
会場:Zoomによる開催
 
教育、福祉を中心にさまざまな領域に携わる研究者や実践者が集っている社会配分研究会が、
(教育の境界研究会の会員、メール会員のなかにもかかわりのある会員が複数いらっしゃいます)
『揺らぐ主体/問われる社会』(桜井智恵子・広瀬義徳編、インパクト出版会、2013)に引き続き、
2冊目の書籍をこのたび出版致しました。
1月例会では、編者である広瀬義徳さん(関西大学教員)、桜井啓太さん(立命館大学教員)をお招きし、
この本のねらいやご自身が執筆された章のねらいなどについてお話しいただき、
みなさんで議論を深めることができればと考えています。
なお、例会には、編者のお二人のほか、
この本を分担執筆している桜井智恵子さんや濱口一郎さん、四方も参加します。
例会では、以上の5名が執筆した章を中心に議論することになると思いますので、
参加される方は、以下の章だけでも事前に読んでおいていただけると幸いです。
第1章 自立・自律した個人という幻想と「共生」の根拠(広瀬)
第2章 依存の復権論・序(桜井啓太)
第3章 反自立という相互依存プロジェクト(桜井智恵子)
第4章 福祉依存批判による生活保護バッシングと自立支援の展開(桜井啓太)
第5章 フレキシブル化する労働と自律的な「高度人材」という罠(広瀬)
第8章 高校家庭科における自立的生活主体と共生社会(濱口)
第11章 学校のアジールをめぐって(四方)

 
これより以前のバックナンバーはこちら

 

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